奇妙なルール2014

 世の中、奇妙なことはいっぱいあるもんです。コンパウンドが50mでリカーブが70mも奇妙ですが、それより奇妙な秘密のルールだと思いませんか? EASTONなら何でもありなんでしょうか。
 その前に「2012〜2013年 全日本アーチェリー連盟競技規則」です。
 
第205条(リカーブ部門の用具の通則)

 リカーブ部門では、以下の用具を使用することができる。

2 弦は、その目的にかなった材質の原糸を使い、好みの色や本数を合わせて作ることができる。弦には、引き手の指を掛けるためのセンターサービング、必要ならば矢のノックをつがえるために追加のサービングを巻いた1ケ所のノッキングポイントと、その位置を決めるための1個または2個のノックロケーターおよび弓を張るときにストリングノックをはめるためのループを両端に有している。
その他にリップマークまたはノーズマークとして1個の付着物を弦に付けることが許される。弦のサービングの端は、フルドローのとき、競技者の視野内に入ってはならない。また、弦にはピープホール、目印またはその他一切の照準の助けになるものがあってはならない。

 
 ということで、コンパウンドではこの部分で「ピープホール」(ピープサイト)や「ループストリング」と呼ばれる付着物がこれ以外に認められますが、リカーブではこのとおりです。簡単に言えば「ノッキングポイント」と「キッサーボタン」「サービング」以外は、ストリングに一切付いていてはいけないのです。ルール違反です。特にリカーブでは、ピープサイトに代表される「2点照準」の助けになるものは、厳密に禁止されています。
 また、競技規則には載っていませんが、コンパウンドではこれ以外に「ストリングサイレンサー」と呼ばれる消音のための付着物が認められています。このようにルールブックにないルール(?)もあるわけです。
 
Frequently Asked Questions on "Rules"

In this section you will find answers to some questions frequently received at the World Archery
Office on various topics in relation with the Rules, but that are not official interpretations from
World Archery as per its Constitution and Rules.

Question:
Are string silencers legal for use in the recurve, compound and longbow divisions?
Response:
Legal only in the compound divisions and not in the recurve or longbow divisions
 
 同様にストリングに付けるものではありませんが、ストリングに影響を及ぼすものとして、次の規則があります。
 
第205条(リカーブ部門の用具の通則)

 リカーブ部門では、以下の用具を使用することができる。

6 弓に取り付けたスタビライザー(複数)およびTFC(トルクフライトコンペンセーター)(複数)は使用することができる。
ただし、以下の条件に適合すること。
 ・ 弓のガイドにならないこと。
 ・ 弓以外の物に触れていないこと。
 ・ シューティングライン上で他の競技者の障害とならないこと。

 
 ということで、これらのルールを理解したうえで、この弓を見たらどう思いますか。
 コンパウンドの最近のモデルでは、ほとんどすべてのメーカー、モデルに装備されている「ストリングストッパー」などと呼ばれる道具ですが、それが2個リカーブボウに付いています。Hoytが売り出した「ステルスショット」(Stealth Shot)なる商品です。
 弓具検査で善良な競技役員と選手がこれを見て、この使用を認めるならその判断を疑います。なぜならこれは「弦(弓)のガイド」だからです。ストリングハイト時にストリングがこれに触れていなくても、発射時に触れることでその性能(?)を謳っている道具です。明らかにルール違反です。
 ところが、ところがです。
 
Response from the Technical Committee:

It is the unanimous decision of the Technical Committee that the limb vibration
dampening device in question is legal for the Recurve Division.
Additionally, should the question arise, the Technical Committee believes the device
does not provide any additional aid in offering bowstring alignment. This decision
follows the interpretation of the Technical Committee interpretation dated April 23, 2012
concerning the location of a stabilizer on the upper inside of the riser.
The only stipulation is that the bowstring of the bow may not touch the dampening device
or devices when the bow is at its static resting brace height. That is, when the bow is
strung, but not being shot, the bowstring may not be in contact with the dampening
device/s at brace height.

World Archery Technical Committee, 27 November 2013
Approved by the World Archery C&R Committee, 11 December, 2013
 
 ストリングハイト時にストリングが触れていないことを前提に、使用を良しとするというのです。まったく奇妙です。常識を疑います。それはこの商品を云々ではなく、ルールの本質の部分をです。触れることをルール違反であると認識したうえで、ハイトより先で触れるならいいというのは詭弁です。
 その前に、この道具だけのことを言うなら、個人的にはストリングストッパーをリカーブで使うことをまったく評価していません。仮にこれによって的中精度が向上したり、スピードが増すと言われたとしても、、、ストリングや弓の耐久性、シューティング感覚と相殺した時に個人的に使うことは決してないでしょうし、その前にこの道具がリカーブで生き続けることはないと思います。
 コンパウンドでストリングストッパーが生まれたのは、コンパウンドのそれも最近のモデルが登場してからです。最近のモデルのリムはパラレル(平行)であり、それを通り越している形状のモデルもあります。コンパウンドのリムは上下に引かれるのです。しかしリカーブは的方向への反発です。ベクトルの向きが違い、滑車も付いていません。それはベアシャフトチューニングやペーパーチューニング、そしてアーチの掛かったハンドル同様にコンパウンドの技術のうわべの転用(コピー)にしか過ぎません。
 そういえば昔、1970年代前半まで「カウンターバランス」なる道具が一世を風靡しました。 →
 ハンドル手前下に付いている、今で言う「ダンパー」です。手前の上下に付けることもあります。それは弓に負担を掛けることなく、ストッパーなどよりはるかに確実に弓のショックを消し、ストリングを止める道具です。そういえばあの頃、このロッドの長さをいろいろ試行錯誤したものです。長すぎるとストリングが当たって、ストリングが切れるのです。そのため安全のために球形のウエイトをここには使っていました。

 というより、これもホイットの写真ではありませんか。ホイットおじさん最初のテイクダウン。ミュンヘンオリンピックを完全制覇した名機です。あのHoytはもうありません。今のHoytは昔の本物のHoytではありません。

 と、何を言ってもダメなんでしょうが。それでは、これはどうですか?!
 ダミーサンプルを作らなくても、このPSEはハンドル下部がオフセットしているので試してみました。こんなイメージです。ピッタリです。
 ストリングハイト時にストリングが触っていない、ちょうどコンパウンドでいう「ケーブルガード」のようなロッドを写真のようにハンドルに取り付ければいいのです。ストリングは発射時以前にこのロッドに沿ってアーチャーズパラドックスを解消し、真っ直ぐ返ってくれます。これこそが「弦のガイド」でありながらルールに抵触しない高性能スタビライザーです。弓の動きだけでなく、ストリングの動きも安定させるスタビライザーです。これもノックがストリングを離れる前にストリングに触れます。ただし、ハイト時には触れていません。どうですか。
 もしダメと言うなら、ストリングストッパーのゴム部分にちょうど時代劇の「十手」か楽器で使う「音さ」のような、左右非対称のY字型金具を付けるのも方法です。その方がもっとストリングの収まりはよく、弦離れもセンターから出ます。どうです? よっぽど市販のステルスショットより効果的です。
 わかります? でも、これを認めて欲しいのではないのです。もしこんな道具を認めだしたら、、、
 
第205条(リカーブ部門の用具の通則)

 リカーブ部門では、以下の用具を使用することができる。

1 弓は、ターゲットアーチェリーで使用される弓という一般通念および語義に適合している限りどのような形式のものも使用することができる。
すなわち、弓は、ハンドル(グリップ)、ライザー(シュートスルータイプは不可)、および両先端にストリングノックが設けられた2本の弾力性のあるリムによって構成された器具である。弓は、2個のストリングノックの間に、ただ1本の弦を直接掛けるように張って使用し、引くときには、一方の手でハンドル(グリップ)を握り、他方の手の指で弦を引き、保持(ホールドバック)し、リリースする。
ブレース付きのハンドルは使用することができる。ただし、そのブレースが常に競技者の手または手首に接してはならない。多色に塗り分けたハンドルおよびアッパーリムの内側に商標のある弓を使用することができる。

 
 205条の一番最初にある、もっとも本質的な部分がまた崩れ去るのです。こんな弓が、「一般通念および語義に適合した」リカーブボウと言えるのでしょうか???
 シュートスルーハンドルは認めず(一般通念および語義に適合しないという理由で)、アーチの掛かった弓(ブレース付きハンドル)は適合と無理やり認めさせたEASTON。もう何でもありです。それなら、そろそろリカーブも昔コンパウンドであった「アンリミテッド」の部門を復活させてもいいのかもしれません。滑車とリリーサーさえなければ、一般通念としての弓の形をしていなくてもいい部門です。どうでしょう?
 商品の機能や性能やハッタリを言っているのではありません。ルールの話です。
 ところで試合中、雨や炎天下でストリングが伸びてストッパーに触っていたら、すぐにジャッジを呼びましょう。ルール違反ですから。。。。

copyright (c) 2013 @‐rchery.com  All Rights Reserved.
I love Archery