誰でもわかるハンドルのこと(下)前後バランスとセッティング

 ここまで客観的事実として皆さんのハンドルとの違いを見てもらえば、X-Appealがすばらしいハンドルであることは一目瞭然な訳ですが、、、ではなぜトップ選手が使っていないの? という疑問があるはずです。しかしこれが1990年代までのアマチュアリズムが歴然と存在した時代ならともかく、今は悲しいかなアマチュアも物品だけでなく金銭の供与を受ける時代です。プロは当然のことながら、強くないアマチュアであっても現物が配られます。世界に限らず日本においてもです。そんな世界の中で実は、例えばHoytというブランドは我われ紙に書かれた丸い輪を射つ選手にとっては凄いように思っていますが、全体から考えれば販売数量や規模はPSEより下のブランドです。弓全体ではコンパウンドでありハンティングであり3Dがダントツのビッグマーケットであり、オリンピックや50mという競技はほんの一部のマニアックなマーケットに限られているのです。その意味で、PSEは我われの世界に対してはほとんど本気ではありません。技術とノウハウがあっても、選手対策を含めた広告宣伝の対象はあくまでコンパウンドなのです。
 では最後に、もう少しX-Appealが皆さんの弓と違うところを書いてみましょう。
 X-Appealが上下左右にバランスが取れ、軽量で高剛性でバランスの良いハンドルであることが分かってもらえたでしょうか。非常に使いやすいという言葉の裏に、狙っている時に安定感があり、真っ直ぐ押せて、真っ直ぐ残せて、真っ直ぐ飛び出す非常に完成度が高いハンドルです。それでいて軽く、折れたり曲がったりせず耐久性もあり、これだけ揃っていながら決して高価ではないハンドルというわけです。しかし、X-Appealがすばらしいのはこれだけではありません。
 これも一目瞭然、引くだけでも、射てばそれだけで体感できるあなたのハンドルとの違いを、もうひとつお教えします。ちなみにハンドルにダンパーを付属したり、リムセーバーを使わないと落ち着かない弓は本来ではないことを知るべきです。
 あなたはセットアップで弓を構える時↑写真のように小指をエクステンションロッドに掛けることができますか? X-Appealは自然に小指が掛かるくらいに、センタースタビライザーの位置がグリップの近くにあるのです。ピボットポイントから77ミリしか離れていません。あなたのハンドルはどうですか? これは画期的なことです。この位置が一致することが理想なのですが、木製ハンドルの時にはメーカーも多少のトライはできたのですが、ハンドルが金属になってからは折損(マグネシューム鋳造の時代に)を避けるために離れたまま、何の努力もせず現在に至っています。
 例えば最初の方に書いたセットアップポジション(ハンドルの中でのピボットポイントとプランジャーの位置)ですが、実射においてはこれにセンタースタビライザーの位置が大きく関係します。センタースタビライザーをハンドル下部の穴に付けることを想像すれば分かると思いますが、ドローイング時に弓が動きます。リリース時には弓全体がキックバックして跳ね上がることを感じるはずです。ところがX-Appealはセンタースタビライザーがピボットポイントに近い分、動きがスムーズで振動吸収も自然なのです。
 昔は長距離でのエイミング時にスタビライザーがサイトピンに重なることがありました。しかし今はありません。それにあの時代でもヤマハはセンタースタビライザーを3度下方に向けて設計していました。今ならカーボンハンドルでピボットポイントからスタビライザーを出して、折れないハンドルを作ることも可能です。他のメーカーがこの性能をコピーしないことが不思議ですが、耐久性と技術力と努力のなさ以外に説明がつきません。このことは見過ごされていますが凄いことで、X-Appealは実際にそれを商品化しているのです。引いてみればここでもバランスの良さが簡単に分かるはずです。
 
 最後は「ポンド調整機構」の方式です。これは好みや考えがあるでしょう。ただし言えることはこの部分に必要なのは安心感と安定感、そして簡単確実さです。だから「ワッシャ」だよ、というアーチャーも多いでしょう。反論はしません。ただし、個人的にはワッシャの弓は頼まれても調整するのはいやです。あまりにも労力(時間と力と繰り返し)が掛かりすぎます。疲れます。それに対し、このX-Appealの方式は、簡単確実で正確です。ほんの少しならストリングを張った状態でも微調整を試せます。そして位置が決まれば、どちら方向も単純確実なダブルロックで緩んだり動いてくることもありません。
 好みですが、写真をご覧ください。シンプルでしょう。
 そして今度こそ、最後の最後です。良いか悪いかはともかくとして、先に書いたようにPSEはリカーブボウに参入したころ、そんなに本気ではなかったのです。そのお陰でセットアップポジションと一緒に「グリップ」もヤマハからパクリました。今でこそコピーマシンができて木製のグリップを簡単に作れる時代になりましたが、20年前はハンドル同様に金型を起こしてとんでもない金額をそこに投資しなければグリップが作れない時代でした。そこでPSEはヤマハのグリップが使えるハンドルにしたのです。そしてその寸法(ハンドル幅)は今も継承されています。
 もちろんPSE純正の木製グリップは付属していますが、それ以外にJager社オリジナルや今は亡きヤマハのグリップが今も使えます。ヤマハのグリップの素晴らしさも試してみてはどうでしょうか。今のほとんどのグリップは、最初みんなこの形状をパクッたのですから。
 ということで、信じてもらえなくてもいいですが、少しはハンドルの見方が分かってもらえたでしょうか。
 ハンドルにも性能があるのですよ、性能のあるハンドルには。値段や見てくれや色ではありませんから、ご注意ください。
 
 (オマケ) ついでに、もう4年も前に書いた「うんざり」のハンドルですが、、、、全体長さが同じでリムが伸びればウインドウが短くならざるを得ません。そうなれば当然、インドアではサイトがウインドウ上部に隠れて狙えません。それだけならアルミ矢を使えば、あるいは低ポンドならサイト位置は下がるのでいいのですが、高ポンドで(トップ選手がそうです)カーボンアローなら30mのサイトが取れません。(だから70mになったのかなぁ) となるとイレギュラーな「27インチ」というハンドルが突然登場。しかし弓の全長が長くなると、矢が飛ばず性能が発揮できません。そこで短絡的に考え出したのが、27インチハンドルにエクストラなショートリムをセットすることです。ところが逸れように開発したのではなく、これまでと同じコンセプトでリムの長さだけ短くなれば、負担が掛かりすぎます。ハンドルが折れなければ、リムが折れます。それに単純にリムを短くしても本来の性能は発揮できません。あー、やっぱり今もうんざりでした。。。
      (おしまい)

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