惨めなハネとアロークリアランス

 ほんとうはよくありません。ちゃんとチューニングしないとダメなのは分かっているのですが。。。。
 ちょうどインドアシーズンになって、わけあってストリングハイトを低くして1ヵ月半ほど、いつも使うインドア用のアルミ矢(インドア用ですから鳥羽根です)を射っていました。もちろんある程度射った段階で分かっていたのですが、上側のヘンフェザーの羽根だけがこんな惨めな状態になってしまいました・・・・。
 羽根が当たっています。当たっているのはレストのツメではなく、プランジャーチップ付近です。本来アルミ矢なら「2014」がサイズとしてはベストなのですが(実質ポンド約42、ノックからプランジャーまでのシャフト長さ28半インチ)、数年前からインドア用として大口径シャフトの「2212」を使っています。スパイン的に同じであっても、肉厚より口径の方が硬さには効いてくるので、硬めといえば硬めですがこれまではこんなにはなりませんでした。最大の原因は、やはりハイトの低さです。「7-3/4インチ」。ボウレングス68インチに限らず個人的な感覚では、異常な低さです。が、最近は8インチくらいが一般的で、66インチの弓なら7インチ台で射つアーチャーもいるのでしょう。
 しかし64インチの弓であったとしても、7インチ台のストリングハイトは異常に低いと認識するべきです。それは弓の性能以前の問題であり、いくらメーカーが矢速を上げるために推奨したとしても、的中に対して他のリスクが増します。それが今回のトラブルです。
 今回、鳥羽根なので羽根が磨り減るという結果になっていますが、これがスピンウイングなどのフィルムベインなら発射時にハネが吹っ飛ぶか、ハネに傷が付いたりクシャクシャになっていきます。ビニールのソフトベインならハネが取れるのはよほどですが、逆にウインドウの当っている部分にハネの色が残ったりします。最近はアウトドアではフィルムベインが多いのでしょうが、良いか悪いかは難しいところですが、鳥羽根同様に素材として柔らかく、また簡単に剥がれる(吹っ飛ぶ)ので、比較的的中に影響を及ぼさないように見えます。しかしだから良いというのでは、決してありません。
 
 その前に、アウトドアでも1960年代後半までは鳥羽根が主流でした。というか、それしかありませんでした。今、鳥羽根を外で使うことを考えれば、その恐ろしさは簡単に想像がつくはずです。風の影響をまともに受けるだけでなく、雨でも降ればハネの機能は失われます。そこで発明されたのが「プラバネ」と呼ばれる、プラスチック製のハネでした。当時(ソフトベインが1970年代中頃に登場するまで)は、それが最先端の最高性能でした。しかし、精度や性能は現在のハネより優れるこのプラバネが主流の座を譲ったのは、傷みやすい(的面での矢同士のヒットでも割れたり取れたりする)ことに加えて、よほどスパインがあってチューニングがちゃんとなされないとまともに飛ばなかったからです。今回のようなレスト部分でのトラブル(ハネが弓に当たる)があれば、シャフトは大きく弾かれ矢の弾道(的中)に悪影響を及ぼしました。薄い下敷きのような硬さのハネは、取れたり逃げてはくれません。だからこそ当時のアーチェリーを知る、あるいはそんな知識があるアーチャーはアロークリアランス(矢とウインドウの間隔や状態)やレストでのトラブルに関して理解でき、神経質になれるのです。
 自分はフィルムベインでカーボンアローだから関係ない、と安心するアーチャーもいるでしょう。それが今のハネが普及した最大の理由です。ところがこの問題は、カーボン矢になり、矢が目に見えないスピードで飛ぶようになってから、もっと厄介になったのです。確かにシャフトの外径(太さ)が細くなった分、カーボン矢は単純にアロークリアランスは広がります。しかし、カーボンの方がアルミに比べて素材の特性上、非常にシャープな動きをするため、矢はレストギリギリの所を通過していくようになりました。また、カーボンになることでシャフトの重さが圧倒的に軽くなりました。アルミ矢なら多少のヒットには耐えてくれたものが、カーボン矢だと簡単に弾かれ、弾道を乱します。しかもハネが柔らかく、シャフトが黒い(傷が見えにくいのです)ためにそんなトラブルを認識しにくくなったのです。カーボン矢はアルミ矢に比べて、スパインの選択やチューニングが難しくなっているのです。しかし最大の問題点は、ハネが取れてもまったく気にせず射っている無神経なアーチャーが増えたことです。
 と、こんな予備知識を持ったうえで、ストリングハイトです。ストリングハイトを低くすれば、ストリングが矢に触っている(押し出す)時間が長くなり、当然矢が弓から受けるエネルギーは大きくなります。その結果、矢は速く飛び弾道も低くなるのです。ところがこのことは実は諸刃の剣なのです。ストリングと矢が触っている時間が長いということは、逆に言えば矢は弓(弓を持っているのはアーチャーです)の影響下にコンマ何秒の世界であったとしても、長くいるのです。これは弓の影響を大きく受けることであり、もしアーチャーの押し手やリリースにミスが生じれば、それが確実に矢に伝わります。矢の持つエネルギーを考えなければ、矢はコンマゼロ1秒でも速く空間に飛び出した方が的中精度は高いのです。後の問題は風などの外的条件だけです。ところが、ハイトを低くすればするほど矢速は上がっても、技術的な問題を的面に反映しやすくなるのです。
 そしてもう1つ。ノックはストリングハイト位置でストリングから離れるのではありません。伸びないストリングを使っていても、ハイトからなお1インチかそれ以上押し出したところで、やっと矢は空間に飛び出します。ところがこの時、すでに矢はアーチャーズパラドックスによりストリングと一緒に大きく蛇行しています。そんな矢がやっと自由になった前方15センチのところに、レストとプランジャーチップが待ち受けているのです。20センチあればなんとかうまくクリアできるかもしれませんが、15センチでうまく通過するのは至難の業となります。
 たとえレストに当たっていっても、アルミ矢の鳥羽根は羽根が逃げてくれます。シャフトも重く弾道に及ぼす影響はほとんどありません。しかしそれを避けるなら(鳥羽根でなければ避けなければなりません)、プランジャーをもう少し出したり、バネをもう少し硬くしたりして、矢の飛び出し時に矢をレストから離す工夫が要ります。それは矢がキレイに飛ぶ前提ですが、幸いに鳥羽根の最大の長所(インドアにおいて)は修正力に優れる点です。もし鳥羽根以外を使うなら、この惨めに磨り減った高さより低いハネを使えばいいのですが、それはまったくミスをしないシューティングをすることが前提になります。毎回でなくても、たまにでもフィルムベインを吹き飛ぶなら、それはたまにミスシュートをしているということです。そしてうまく射っている時でも、矢はレストギリギリのところを通過している証拠です。
 結局、この試合の後個人的には、ストリングハイトを「8-3/8インチ」に上げましました。アウトドアでのカーボン矢の時もです。非常にいいです。満足しています。来年のインドア前には、ちゃんと新しい鳥羽根に貼り替えます。今年もまだ数試合インドアがありますが、磨り減った羽根で射っていても初心者と間違わないでください。よろしく、お願いします。。。

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