スタビライザー

 アーチャー個人が弓を作る、矢を作るとなると、マイケル・ジャクソンかビル・ゲイツがアーチェリーでも始めるのでない限り、そう簡単なことではありません。ところが「スタビライザー」というのは、アーチェリーで使うモノの中では最も多様性に富み、比較的簡単にそれらを作ったり試たりすることのできる道具です。そしてなおかつ、その結果や的中性能がはっきりと個人にも確認できたり認識できる道具です。だからこそ面白いし、遊べるのですが、逆に一歩間違うととんでもない結果を生み出すこともあります。
 その理由は、スタビライザーがその名のとおり「安定装置」であるがゆえに、安定は両刃の剣にも成りかねないからです。分かり易い例が、スタビライザーは上級者(初心者ではないという意味で)の道具であり、だからそれを使えば矢がきれいに飛び、当たるようになると考えているアーチャーもいるでしょう。確かに初心者は肩への負荷やフォームの安定といった観点から、スタビライザーを使うことはあまりありません。では、スタビライザーが付いた弓と付いていない弓ではどちらが矢がきれいに飛ぶかというと、スタビライザーがない方が矢はきれいに飛び易いのです。
 なぜならスタビライザーは安定装置として弓の動きを止めます。すると動きにくい弓は矢がレストを通過する時に弓が逃げない分、レストに当たったりというレストでのトラブルを起こし易くします。だから初心者がスタビライザーを付け出した時に、それまで一応飛んでいた矢が真っ直ぐ飛ばなくなる原因はそこにあります。
 クッションプランジャーが発明されたり、本来のスタビライザー効果とは逆行するようなダンパーやTFCといったスタビライザーに動きを与える可動装置が考え出されたのはそのためです。
 
 そこで、先に進む前にまずここで復習をしてください。
スタビライザーの変遷(重さ) スタビライザー考 その1
スタビライザーの変遷(振動) スタビライザー考 その2
スタビライザーの変遷(固定) スタビライザー考 その3
 
 よく読んでいただけましたか?!
 この中にも書いてあったと思いますが、スタビライザーには大きく分けて2つの目的(効果)があります。
 ひとつは最初に書いた、弓の動きを止める働きです。矢飛びなどの問題は別にして、ともかくは弓が動かない、動きにくいことによって安定(固定)することで的中精度を高めようというものです。これは分かり易いと思います。
 問題はもうひとつの方なのです。「振動吸収」です。ここでも大きく2つに分かれます。
 ひとつは射った時の弓の反動も含めた発射時の「大きな振動の吸収」です。これは先の弓の動きを止めることとも関連するのですが、スタビライザーのロッド(棒の先に重りが付いた道具)で弓の回転モーメントなどを抑えることと、ロッド自体の機能や特性(カーボン素材の減衰率によるものやロッド自体の形状などでの吸収)によって振動を消すことを目的にしたものです。
 そしてもうひとつ。これが一番軽視される傾向にあるのですが、本当はアーチャーにとっては最も重要とも言える「微振動の吸収」です。これが軽視される原因のひとつに、スタビライザーや弓の宣伝には初心者や中級者は使われないことがあります。世界のトップアーチャーが使う道具として、それらが宣伝されるからです。彼らはオリンピックの桧舞台でも震えることなく、早くクリッカーを落として射つことができるのです。しかしあなたは世界チャンピオンでもなければ、震えだす前にいつも同じペースでクリッカーを鳴らせるアーチャーでもないのです。そしてもっと重要なことは、仮に世界チャンピオンであったとしても、生身の人間である以上、必ず震えは発生し弓は振動するという事実です。
 分かりますか? 安定(固定)の名のもとで、世界チャンピオンが使う決して彼らはお金を払わないが、我々は高いお金を払い手に入れる高剛性の逃げ場のないスタビライザーやセッティングは、矢とレストのクリアランスを狭め、エイミング時の振動を10倍にもしてあなたのサイトピンを襲わせるのです。もしあなたがあなた自身を見ることができないのなら、あなたのまわりのクリッカーの鳴らないアーチャーをよく観察することをお勧めします。どれほど振動が高価なスタビライザーから揺り戻され、発射時のリムの挙動がどれほど大きな音と共に弓全体を波打たせているのか。
 
 では、スタビライザーを使う目的を整理してみましょう。
 まず弓の動きに対しての安定です。基本的には 重さ×長さ で考えられる慣性モーメントによって弓を動き難くするわけですから、長い重いスタビライザーをいっぱい取り付ければ単純に弓は動かなく、動かし難くなり安定(固定)はしますが、これではアーチャーの身体的負担が大きく、また風などの外的条件への対応としてのコントロール性が低下し、効率の良い方法とはいえません。
 そこで形状から安定を求めます。例えば Vバーのように、左右の安定を求めるなら左右に、エイミング時の安定を求めるなら手前の下側に重さを配置するなどの形と重量配分です。これも同じ効果が得られるなら、短く軽い方が有利なのは言うまでもありません。しかしここで注意しなければならないのは、単に弓が手の中に安定すれば良いということではありません。発射時の弓の飛び出し感やエイミング時の安定感はアーチャーにとって不可欠な感覚であり要素です。それらを総合的に判断して、自分に合った形状なり重さを見つける必要があります。
 次に求めるのは、振動からの安定です。この時、振動の種類を大きな振動と微振動に分けて考えます。まず大きな振動ですが、こちらも大きく2つに分けられます。発射時のリムの復元に伴うリムの挙動によって起こる弓の内部から発生する動きと、それとは別にアーチャーの技術的問題によって弓の外側から掛けられる動きです。前者は弓のバタツキやショックや音に代表されるものであり、個々の弓が持つ性能上の問題とアーチャーのチューニング上の問題があります。後者はアーチャーのリリースや押し手の押し方などから起こる弓を振ったり動かしたりする、どちらかといえばフォームや技術的な問題から発生するものです。そして特にこの後者が一般にスタビライザーの必要性で語られる要因になっているために、先に述べた弓の動きに対する対策もこれに関連するものになりがちです。
 しかしここまで話してくると分かるように、スタビライザーはリリース時の弓の動き(不良振動)を止めればいいというそんなに単純な道具であるべきではなく、またアーチャーの技術的問題も押し手を振るという単純な動作だけでは決してないのです。
 例えばそれが微振動です。エイミング時にアーチャーは必ず筋肉から震えを発生させます。それは技術や訓練によって軽減したりエイミング自体に影響を与えないようにすることは可能です。しかし生きた人間が完全に静止(固定)することは不可能であり、極度の緊張下や悪天候などの影響下では、やはりアーチャーは微振動対策の準備を施すに越したことはなく、微振動を含めた振動を吸収発散させる機能をスタビライザーが持つことによって、本当の意味でのスタビライザー(安定装置)が完成するのです。
 

 では、次に進みましょう。

 

投稿時間:03/11/11(Tue) 19:49
投稿者名:管理人
タイトル:とりあえずKam’s工房!
Kam’s工房のイントロ部分アップしました〜!
ちょっとスタビライザーで最近考える事があって、特許もひとつとる準備を進めています。で、それとは別に今月中には試作が上がるようにも進めています。
といくことで、皆さんのご意見やアイデアもいただきたいし、考えている事を伝えたいし、、、、ということで、この企画ページ作りました。
このあといろいろ話したい事はあるのですが、皆さんの反応で話の進め方を考えます。
ちょっと気軽にカキコもらえませんか。
それと、考えているのはリカーブ用ということではなく、コンパウンドの皆さんにも共通することを思っています。
ともかくは皆さん、よろしくお願いします! (^o^)丿
投稿時間:03/11/12(Wed) 14:44
投稿者名:匿名希望
タイトル:Re: とりあえずKam’s工房!
 最近は大学生から、大学生「もどき」になって(留年でも院生でもない形で大学にいるので)、レンジを借りる傍ら現役にアドバイス等したりしているちょっと特殊なアーチャーの意見ですが。
 クラブの新入生が弓を1セット購入するときは安くあげようとする傾向が強いようで、最近E○○という名の韓国のメーカーのスタビを買う新人が他大学も含めてすごく増えました。普通、スタビライザーって壊れませんよね?四年間継続して使えそうな部品なのにあんまり性能の吟味をせずに、最安価のものを買う学生が非常に多いです。あの韓国製品の評価は使ったことがないので避けますが。
 ショップの方も、長さと価格以外は大して変わらないと断言してらっしゃる方などおられます。ちょっとした事で、シドニー男子代表のある方とお話する機会もありました。
 いわく、「弓の衝撃・振動は射ったあとのことだからあまり気にしない。だからダンパー、リムセーバーはいらないと思う。そんな理由で俺は高校のときからスタビライザーはイーストンのACEしか使ったことないし、不満もない。」2年半くらい前のお話です。
 で、最近感じていることですが、他と性能差の歴然とした・高性能なスタビライザーの必要性です。そう、まさしくKam'Sの目指すところですね。スタビライザーに限らず、新人などに自信を持って薦められる道具は確実に減っているような気がします。 
 以上、まとまりのない意見でしたが。
投稿時間:03/11/12(Wed) 08:34
投稿者名:通行人
タイトル:Re: とりあえずKam’s工房!
どの様な効果を狙っているのでしょうか?
多分今の道具で進化が最も遅れているのがスタビライザーでは無いかと思っています。何せメーカーによっては十数年同じ物を出し続けているのが現状ですから。ハンドルは重く慣性モーメントは大きくなっているのに・・・・
内部にヒビが入ってピキピキ音のするスタビを平気で販売しています。
弓全体の重さに負けてエイミング時揺れは止まらない。射った後の振動は当然ひどい物。今の選手はこれが当たり前だと思っているから怖いです。当たる物も当たらなくなりす。期待します。
投稿時間:03/11/12(Wed) 12:39
投稿者名:通行人
タイトル:Re^3: とりあえずKam’s工房!
早速のご返答有り難うございます。
私はパラボリックスタビライザーの愛用者です。
と言っても形だけですが、パックリマンやっています。色々な部品組み合わせて廃矢、何とACEで製作しています。単価高いですけど廃棄するよりは余生をスタビで過ごさせる事でACEに成仏してもらっています。
見てくれ悪いのですけれど軽さとしなやかさが両立しています。
本人的には非常に満足していますが7本ではもし新品矢で製作したら
とんでもない金額になります。痛し痒しです。
投稿時間:03/11/12(Wed) 18:37
投稿者名:9292
タイトル:Re^4: とりあえずKam’s工房!
面白そうな企画ですね!期待しています。
効果があるか否かは別として、スタビライザの中に流体ダンパや機械的な安定装置(ジャイロ)等を組み込むのは規則違反でしょうか?質量や慣性モーメントだけでない安定度の追求の要素は残されているか否か...
投稿時間:03/11/13(Thu) 08:27
投稿者名:HOYT TD2
タイトル:Re^5: とりあえずKam’s工房!
> 効果があるか否かは別として、スタビライザの中に流体ダンパや機械的な安定装置(ジャイロ)等を組み込むのは規則違反でしょうか?質量や慣性モーメントだけでない安定度の追求の要素は残されているか否か...
↑色々考えておられるようで。昔いっぱいありましたね。
私はその中でも水銀ダンパ何ぞという物が使い勝手が良かったです。
グシャッと振動を取る感じが良かったです。今のリムセーバー、ハンドル埋め込みのゴムみたいな物ですね。でも細かい振動はダンパでないと駄目なような気がしますが。ルール上は何もありません。新物の品名ではリムセーバーですね。サイトピン類は細かくありますけれど。
投稿時間:03/11/14(Fri) 14:00
投稿者名:9292
タイトル:Re^3: どんどんカキコどうぞ!
水銀ダンパ、やっぱり流体ダンパ方式はあったんですね!
スタビライザの前に...弓本体の安定度が現在は(昔より)落ちているとの話がありますが、弓本体の安定度不足をアクセサリで補うより先に、本体側もナントカしてほしい...矢速重視、高反発を追及した結果でしょうか。
投稿時間:03/11/14(Fri) 19:57
投稿者名:HOYT TD2
タイトル:Re^4: どんどんカキコどうぞ!
弓本体の安定度が現在は(昔より)落ちているとの話がありますが、弓本体の安定度不足をアクセサリで補うより先に、本体側もナントカしてほしい...矢速重視、高反発を追及した結果でしょうか。

本来であればスタビの話をしなければならないのですが、現在の思い入れもあるので少し話させて頂きます。管理人さんゴメンナサイ。
私も非常に古い弓をインドア・アルミアローで使用しています。と言ってもカーボンリムの弓です。安定性という意味では確かに昔の弓の方が良かったように思います。しかしカーボンアローの出現で強度・耐久性についてより求められるようになったと思いますし、昔ケブラー弦の出現と同じ様な過程を辿っていると思っています。可成り強度的にはアップしているようには思えますが、全部の機種がそうとも言い難いのが現状です。仰るとおり矢速アップと長尺アローの欧米選手に対応した機種が出現しています。ブレースハイトダウンの機種ですね。ここで不満なのは思いっきり長い選手が引いたときリカーブの部分が伸びきってしまうことです。これも長尺対応だと言われればそれまでですが、ではAMO規格付近より短い選手が引いたときはどうなるのでしょうか????多分弓を短くして下さいとの回答でしょう。じゃ62は無いのかと聞けば無い・・・どうすればいいのでしょう?ジュニアや女子に対しては不親切だと思いませんか?結局64・・・です。効率悪いですホントに。
あまりにも軽すぎる矢を選択する選手側にも問題はあると思いますが人間である限りコントロールできるスピードに限界がある事を選手も認識すべきです。今のCBはもはや人間・私のような一般人がコントロールできる代物では無いように思えます。それでもコントロールしているのですからその選手は「偉い!」です。
やはりベアボウでキッチリシューテング出来る程度までチューニング出来るのが本当に人間に優しい弓だと思います。その上でのスタビをどうするか。更に安定度を増す為にスタビを有効に配置する。その為の議論と開発なら大賛成ですが、暴れる弓をおとなしくするためだけであれば弓本体でミスを誘発する要素を抱えたままプレーすることになると思います。それが道具側のアキレス腱なるのではないかと思います。その辺も考えながらカキコに参加していきたいと思います。宜しく御願いします。
でも正直言ってスタビ無しでは射てないのも事実ですけれど。この辺に現実と理想のギャップがあります。とにかくリムセイバー何ぞと言う物を使用しなくてもキッチリ振動の収まる(リム本体で吸収する)物を選びたいです。見てくれ・ブランドは二の次です。あくまでもその辺の性能が良く、人間の感性に合った弓が欲しいです今は。
投稿時間:03/11/17(Mon) 11:22
投稿者名:御節介
タイトル:Re: では、どんなスタビが・・・
> では、みなさんはどんなスタビライザーがほしいですか?
>   ↑
先手を打って一言。私のように震度5近くのアーチャーには振り戻しのない振動吸収率の高いスタビです。それと軽さ(モーメント荷重も含めてです)最近の弓は本体がクソ重い物でアクセサリーバリエーションの選択の幅が小さいです。
最も押し手を強靱にすれば問題ないと思っていますが。
投稿時間:03/11/17(Mon) 13:06
投稿者名:HN 44
タイトル:Re^2: では、どんなスタビが・・・
にぎわっているようですね。一言と言うか三言四言になります。基本的には今のスタビで良いようにも思います。軽く簡単なセッティングができます。後は選手自信が震えと言う物を良く理解していないようです。その辺の啓蒙も必要ではないかと思っています。本当に完全固定でよいのであればセンターロット3本でVバーを組んでみれば判ると思います。逆に何故インドアでもその様なセッティングをしないのかが判ると思うのですが。最近そんな馬鹿やる選手見ないです。やろうとすると何か先輩が止めるみたいです。遊び・試しも必要だと思うのですが。考え方おかしいですか?
投稿時間:03/11/20(Thu) 15:11
投稿者名:とっと
タイトル:Re^3: では、どんなスタビが・・・
お邪魔いたします。
大学からアーチェリーを始めて早数年。
個人的に欲しいのは振動吸収性と軽さを両立したスタビです。
APSを使っていてその性能には満足しているのですが普通のストレートロッドに比べて若干重いので・・・・
体力がないだけかもしれませんが。

(Kam’s Board 抜粋)

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