スタビライザーは形状のアレンジや素材の進化を除けば、1960年代後半に発明されたTFC(ダンパー)から1995年のパラボリックスタビライザーまで、新しい性能(機能)は登場していません。今使われているほとんどのスタビライザーは、基本的には棒の先に重りの付いたロッドスタビライザーであることには変わりなく、「棒」としての性能以外の性能はないのです。
 では、棒に動く機能を持たせたTFCはともかくとしても、パラボリックスタビライザーが他のロッドスタビライザーと何が違い、どんな性能を有するのか。

 2002年 ヤマハカップ
 作った本人が言うのもなんですが、最大の特徴であり相違点はパラボリックスタビライザーが棒の中の剛性を変える(移動)ことができることです。そのヒントは1991年にダレル・ペイスとシンシナティーの自宅で会った時、彼が使っていた自作のスタビライザーにあります。彼のスタビライザーも含めどれもが3本ないし4本のロッドを組み合わせた剛性的には弱いもので、それに加えて取り付け向きによって振幅が異なる欠点を持っていました。そこでずっと考えていたのところ、後になってバイター社も使うことになるAVIA(プロセレクト)という90度まで曲げても完全に復元する非常に強度に優れるシャフトと出会うことで、パラボリックスタビライザーを作ることにしたのです。そして結果的にはまったく新しい機能も付加することができました。
 例えば、ストレートロッドでは棒の硬さはその素材が持つ剛性であり、どの部分でも同じです。テーパー(先細り)ロッドでは、太さの違いから根元側が硬く、先に行くほど柔らかくなりますが、これも基本的には素材の剛性が太さによって変わるということです。ところが、パラボリックスタビライザーはそこに装備されたスライダーと呼ぶ部品によって同じ素材であっても飛躍的に剛性を高めることが出来るのです。それだけではありません。スライダーを移動させることで、棒の高剛性部分をロッドの中で動かすことができるのです。スライダーを弓側に持ってくれば根元の硬いロッドとなり、逆に的側に移動させれば先端が硬く根元が柔らかいロッドを作ることができます。この性能によってアーチャーはTFCのようにロッド自体をチューニングすることが可能になり、部分的剛性の違いにより棒が性能としてのダンパー効果を持つのです。
 APS    APS Junior   APR    大口径・複数ロッド
 その評価はすでにリカーブのみならず、多くのコンパウンドアーチャーにもお使いいただいているので、実際にお使いの皆さんにお任せするとして、少し特許の話です。
 Hoytおじさんが考え出したTFCの特許もすでに25年以上が経過して効力はありません。それに最初のTFCは今のように可動部にゴムを使用するのではなく、バネ(コイルスプリング)を使ったものでした。特許の場合、新規性や進歩性に合わせて、その製法や素材や方法が非常に限定されます。例えばバネをゴムに変えたり、金属をカーボンに変えたりすることで特許への抵触を避けることができる場合もあります。だれでもが似たような商品を作れるのです。
 そのためパラボリックスタビライザーは、あえて特許ではなく意匠(デザイン)登録という形で権利の保護を行いました。(意匠登録 第977389号) 形状で登録されるため、本数や材質、そしてやり方がどうであれ、中央部分が膨らんだスタビライザーについては、すべて意匠に抵触します。だからこそパラボリック以降に登場した、複数ロッドのコピー商品やバイター製にいたっても部分的剛性の変更という機能は付加できないのです。それによっての使用率の拡大などは逆に望めなくはなりますが、少なくとも節操のないパックリマンは防ぐことができるでしょう。また、特許として出願していないアイデアであれば、ここで公表することでそれらの権利を独占されることも防げます。
 特許取得はこんな小さな世界を独占したり、金儲けのためではありません。単純に権利の保護と日本のアーチェリーのアドバンテージを目的とするものです。昔、日本人が発明したヤジロベーをはじめとして、ヤマハやニシザワ、そして多くの日本のアーチャーの努力と知恵が世界と日本のアーチェリーを変え、リードした時のように、もういちどその重要性と必要性を考えなければならないと思うからです。
 特 許
 では、「スライディング ウエイトシステム」 (Sliding Weight System) と「フローティング ウエイトシステム」 (Floating Weight System) のスタビライザーが求める性能やアドバンテージとは何か。当然スタビライザーの第一の基本である弓の動きを止めることです。しかしそれに新たな性能として、動く部分を内蔵することによって、第二の基本である振動吸収も実現したいのです。それは微振動もそうですが、弓の的方向への自然な動きだけは阻害しないようなカタチが作れないかを考えました。パラボリックスタビライザー同様に、棒それ自体に新たな性能を持たせての両立です。
 しかしこれはひとつの考え方、あるいはパターンとして提案するものであって、これが最終ではありません。新しい方法や考え方、使い方は10人のアーチャーがいれば10とおりあるように、これをヒントに自分にもっとも適した最良の弓具をチューニングし、作り出せばよいのです。そう考えれば、2つのシステムを合体させたアイデアも浮かぶはずです。
 

スライディング ウエイトシステム」(2003年10月)

 

フローティング ウエイトシステム」(2003年10月)

 

パワーボールウエイト」(2011年10月) 

 
 では、具体的にスタビライザーを作ってみましょうか? あなたはどんなスタビライザーを使いたいですか?!  もう少し、いっぱいアイデアくださーい!!
 
 それでは、、、、
 
 

投稿時間:03/11/19(Wed) 20:18
投稿者名:管理人
タイトル:あなたの「想像力」を・・・
では、あなたの想像力とアイデアをお書きください。
「スライディング ウエイト」と「フローティング ウエイト」からどんなスタビライザーを創り出せますか???
それぞれ単独でも、合わせてでも構いません。どんな理想のスタビライザーが考えられますか。
投稿時間:03/11/20(Thu) 08:58
投稿者名:HOYT TD2
タイトル:Re: あなたの「想像力」を・・・
いや〜今、回想録を頭の中で整理中です。
写真殆ど試しました。先輩諸氏の道具をかき集めてやりました。造りました。
何故自分が止めたか、続けなかったかを頭の中で整理中です。
フローティングは多分ジャイロなんて言う製品がありました。Vバーがバネで前後するやつです。でもバネ・機械式のため発射音が凄い、それとガタが大きく震えだすと音を出して止まらなくなる。精神衛生上良く無かったと記憶しています。
ロングスタビ、多数のロングロットのセッティングは止まりすぎる。動かない。仰るとおりです。これぞ完全固定です。押し手の肩の負担増ですが、インドア、無風のアウトでは抜群です。ただ、押し手のパワーが伝わりにくいので長距離で多少サイトが下がる。しかし矢を的に置きに行くにはもってこいでした。但し試合の後半疲れて逆にミスを誘発する欠点がありました。
ウエイトの位置を変更。短いロットを使用してウエイトを挟み試しました。これも当時はでっかいハーフウエイトしか持ち合わせ無かったので十分な調整が出来ませんでした。又、必要以上にウエイトの枚数が増えるので全体重量が大きくなりすぎやはり肩が持ちませんでした。
可変ウエイトはロット自体の振動吸収が大きいとして(良く揺れる)、共振点をずらすことで振動を吸収できるのではないかと思います。合理的に共振点を見つけだすのが難しいですが・・・・
こんな所ですか?今のところ。もっと考えてみます。
投稿時間:03/11/20(Thu) 15:17
投稿者名:とっと
タイトル:Re^2: あなたの「想像力」を・・・
拙い想像力で考え中です。
APSのスライダーの中に作動流体を入れてバランスを調整するとか・・・
でも、これって手間がかかるだけで手間ほどの効果がなさそうですね。
あと思ったのがスタビ全体を軽くして着脱可能なウェイトを多数付けれるようにする、というものですが、もう既に存在してますね
発表を期待しています。
投稿時間:03/11/21(Fri) 22:42
投稿者名:9292
タイトル:Re^3: あなたの「想像力」を・・・
ウェイトでも流体でも稼動調整部分があるなら、衝撃や微振動を自律的に検知して、どう調整すれば、(設計上)より望ましい状態になるかを示してくれる解析機能付きってのは?
投稿時間:03/11/23(Sun) 18:53
投稿者名:とっと
タイトル:Re^2: あなたの「想像力」をもっと・・・
再びお邪魔いたします。
追加された内容を見て思ったのはまず根元の部分にチタンを使うこと。
これは実際に日本のSと言う会社のスタビで使われてます。
実際使ってみると射った後の振動減衰には高い効果を出します。
でも、加工も大変だから値段が上がりそう・・・・
微振動の吸収としては、APRのような動きをするのかな、と。
自分も現在使っていてあの効果には感動しました。
25インチの長さに収める、て書いてたのでサイドとか全部をユニット化
してスタビライザーシステムを作るのかな、と。
APSのスライダーみたいな円筒状の直径の異なるウェイトを数種類用意して
それによってバランス調整と微振動吸収用の可動部分を作るとか。
なんだか、まとまりがありませんね(汗)
期待しています。
投稿時間:03/11/25(Tue) 08:56
投稿者名:HOYT TD2
タイトル:Re^2: あなたの「想像力」をもっと・・・
気軽に書きましょう。すっかり風邪こじらせました這って会社にでています。ンな事はどうでも良いですけど。でも辛・・・・・
具体的には初心者・初級・中級・中上級・上の下?・上級・超上級・神様何てラベルに分ける必要があると思います。道具がもはやこのレベルまで来ると誰が何をどの様に使用するかは本人の感性と趣味の域に入っています。それを規制する事は事実上不可能です。で、初心〜神様はあくまでも点数上の話でそれにもう一つ射法と言うか見た目と言うか本人の感覚と言う物を加えます。
ブルブル細かく震えても当たる選手、これ押し手のコントロールが上手な選手だと思います。こうゆう選手にはコントロール重視+細かい方の微振動吸収セット。
一見止まっているように見えてクリッカーが切れた瞬間崩れる選手。これはもう全体の軽量化と逆に比較的動きにくいスタビ・押し手に残るようなセッティング。
弓の重さに負けて傾いてくる選手にはモーメントの小さいセッティングが出来るスタビ。
更に初心者〜中級用にはモーメントの調整幅が大きいスタビ+大きい方の微振動(揺れですね)を吸収しやすいスタビ等々・・・・要求する物は無限にあります。
形はともあれ機能を考えて要求するとこんな物が有ると思います。
皆さんはどれに該当しますかネ?因みに私は点数はもう中の下位に落ち込んでいます。理由は加齢から来る筋肉の柔軟性の退化です。従ってとにかくエイミング時の大小振動を捕るセッティングを心がけています。飛び出しは悪いのですけれどミスの軽減効果でシングルで20〜50点位違います。なぜならM射が減ります。
投稿時間:03/11/26(Wed) 15:34
投稿者名:通行人
タイトル:Re: あなたの「想像力」を・・・

難しい質問です。思わず足が止まってしまいました。立ち止まって空を見上げて思わず目が虚ろになりました。今までのカキコを見ると一つ盲点があるように感じました。「フローティング」文字通り浮いていると考えて良いのではないでしょうか?今までのシステムは直線方向又は良くても回転方向です。完全に浮いている(浮いている状態で)状態で振動を発散するシステムは無かったように思います。ダンパーですら面で接触している為、吸収方向は限定されます。良くて回転運動ですか?
つまり360°全周囲振動発散システム。何ぞというもので如何でしょうか?
スライディングは文字通りウエイトが動かせると同時にその位置によりロットの堅さを調整できる!如何?
両方のシステムを組み合わせることにより全周囲の大振動・微振動を吸収する。少なくともサイトを襲う振動を吸収する。当然衝撃に対する吸収効果も期待できると思います。後はコントロール性能がどうかです。
長く立ち止まってしまった。通行しなくては。

投稿時間:03/11/25(Tue) 10:05
投稿者名:40肩アーチャー
タイトル:Re^3: あなたの「想像力」をもっと・・・

車のショックアブソーバーのような構造は、どうでしょうか。弓の飛び出しを確保しつつ、振動吸収効果が高そうな・・・。でもすごい値段になってしまいますね。

投稿時間:03/11/25(Tue) 13:06
投稿者名:HN 44
タイトル:Re^4: あなたの「想像力」をもっと・・・
40肩のアーチャーさん良いことに気が付きました同感です。
で、油のダンパーはすぐ壊れます。オイル漏れで。それなら空気シリンダー式はいかがでしょうか?ボマーのオイルショックは良いのですがあれも壊れます。そして重いです。空気式にし外側シリンダーにVバーを取り付けられる様にする。サイドのスタビが振動吸収率が高ければ結構いけるかも?でも共振をどう抑えるかが問題か
投稿時間:03/11/25(Tue) 18:09
投稿者名:おばかなアーチャー
タイトル:Re^5: あなたの「想像力」をもっと・・・
チョット考えてみました。パラボリックスタビライザー系であれば可変本数などはどうでしょう。今は基本は周囲5本ですが6本にして中央入れて7本、APRの6本タイプの径を小さくした様な形でです。根元から3/4位まで6本でその先は3本です。スライダーは当然根元の方に向かって調整。根元は堅く、先は柔らかい。今の材料であればこんなのはどうでしょう。
投稿時間:03/11/25(Tue) 18:18
投稿者名:おばかなアーチャー
タイトル:Re^6: あなたの「想像力」をもっと・・・
失礼しました。よく見たら全部5本でしたね。まァ3本3本で6本+中央と言うことで。
投稿時間:03/11/28(Fri) 13:29
投稿者名:通行人
タイトル:Re^2: あなたの「想像力」を・・・

またまた通過します。ジャイロ効果ではコントロール性、瞬時のエイムオフに対応できないのではとも考えました。止まりっぱなしになりますね。逆に動かせなくなります。人間の感性から乖離するようにも思います。
やはり全方向振動吸収型でないと効果は薄いのでは?
投稿時間:03/11/29(Sat) 00:58
投稿者名:Djnii
タイトルRe^4: あなたの「想像力」を・・・

我ながら突飛な発想ですが(Easton ACE/SSを使ってます)
解析は人間がやるということで、親指あたりの動きで
細かくスタビライザーの角度 or バランスを変えられるなんのは
いかがでしょう(何か動力が必要ですが)
角度だと剛性に問題が出そうなのでバランスかな。
操作はゲーム機のスティックみたいなので。
人間から見てるとどっかに止まってしまったサイトを最後に
機械的にあわせる事ができるというイメージです。
確かに止まってしまうと動かないので、
こういうときにスタビを中心に弓の方を動かせると便利かなと。
使う方も訓練が必要そうですが。
投稿時間:03/12/07(Sun) 00:19
投稿者名:NAR
タイトル:Re^5: あなたの「想像力」をもっと・・・
> で、油のダンパーはすぐ壊れます。オイル漏れで。
ちょっと思いついたんですが、オイルダンパーのシリンダーをウェイトにして全体を密封できるようにするのはどうでしょう。
具体的に言うとチューブの中央にばねで重りを固定し、その中に油を入れるというものです。
重りとばねを気軽に取り替えられるように出来れば、従来のスタビとは比べ物にならないほど調整範囲が広がるのではないかと思うのですが、どうでしょう。
投稿時間:04/02/06(Fri) 23:34
投稿者名:ボブ
タイトル:Re: あなたの「想像力」を・・・
ちと前にNHKの「プロジェクトX」で新幹線のサスペンションに「空気サスペンション」を開発し新幹線を走行させる夢を実現したという話がありました。
で・・非常に単純なんですが・・・
バネものに空気の力使えませんか?
もう・・技術的論理的でなくただの思いつきなんですが(^_^;)
投稿時間:04/02/07(Sat) 12:56
投稿者名:通行人
タイトル:Re^2: あなたの「想像力」を・・・
昔昔、バネ式で前後するVバーとガスショックだったかオイルショックがありましたがすぐ壊れるため消えたなくなりました・・・

(Kam’s Board 抜粋)

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