インドアアローでヘビーポイント

 インドア競技(18m)ではインドア用のアルミアローを使うのが鉄則ですが(個人的には)、普通は他人の矢は作らないのですが、わけあって今回も女の子のインドア用アローを作ることになりました。女の子とはいっても矢は短いのですが、表示で40ポンドを使うので「XX75-PlatinumPlus 1913」で作ります。アウトドアで使っているACEの外径が「5.3ミリ」に対し、このアルミシャフトの外径は「7.8ミリ」あるので、十分に大口径シャフトといえます。インドアなら数点のオンラインタッチは確実です。(それ以外にもメリットはあるのですが。)
 そこでこれまでにも書いてきたように、カットしてポイントを付けて、鳥羽根を貼れば簡単にできあがるのですが、、、今回はシャフト自体が軽いということもあるので(カーボンに比べれば十分に重いのですが)、ヘビーポイントで作ってみようと思います。
 その前に、何を指して「ヘビーポイント」というかです。最近のカーボンアローはポイントの種類が多いことやブレイクオフ(軸部分を折って重さを調節)形式のポイントが増えたことで、ヘビーポイントという言葉はあまり使わなくなりました。この言葉は昔、アルミアローの時代に「レギュラーポイント」に対して「ヘビーポイント」という名称が使われていた時の名残です。そしてヘビーポイントをメーカー(EASTON社)が作るようになると同時に、「レギュラーポイント=7%ポイント」「ヘビーポイント=9%ポイント」という使われ方もされるようになりました。そしてこれと同時にそれまで「傘型」だったポイントの先端形状が「砲弾型」に変更され、現在に至っているのです。
 では何が「7」や「9」なのかですが、最近のアーチャーには「F.O.C.」という呼び名の方が分かりやすいかもしれません。矢の重心位置がシャフト全体の中心から何パーセントポイント側にあるかを表すものです。この数値にはあまり深い(厳密な)意味はないのですが、多分カーボンシャフトでは「1?%」10数パーセントが一般的であり、10以下の7や9%は特別なセッティングででもない限り使われないでしょう。しかし昔のアルミシャフトではシャフト自体の重さもあり、今のようなハイテクなリムやストリングを使い出す前のことであり、重心位置優先では矢が重すぎて飛ばない(当たらない)状況でした。そのためヘビーポイントを使っての「トップヘビー」は必要ではあっても、7を9にする程度しか現実には難しかったのです。
 しかし今では高密度ポリエチレンのストリングなどによって、より多くのエネルギーを矢に伝えることが可能になりました。そしてインドアという短い(18m)風の吹かない環境では、鳥羽根だけでなく10%を超えるトップヘビーな矢の使用も可能になったのです。
 ところが最近はアルミシャフトにおいてはレギュラーポイント(N.I.B.B.7%)のみが一般的で、ヘビーポイントは入手できません。そこで10%を超えるF.O.C.の矢を作るには、自分でポイントを細工するしかありません。レギュラーポイントを重くするわけです。幸いアルミシャフトの競技用ポイントは「2ピース」構造で軸部分はチューブ(スリーブ)形状になっています。ここに重りを組み込めばいいのです。
 その前にあくまで参考にですが、以前も量ったことがあるようにポイントには元々どの程度の誤差があるか見てみましょう。1グレイン=0.0648グラムです。換算はお願いします。
 上の写真のパッケージにもあるように、メーカーはこのポイント1個の重さを「63.7グレイン」と表記しています。ところが実際には4.12グラム=「63.58グレイン」のようです。最大4.14グラム−最小4.11グラム=0.03グラム
4.12gram 4.14gram 4.13gram 4.12gram 4.12gram 4.12gram 4.12gram 4.11gram 4.11gram 4.11gram 4.12gram 4.12gram
 参考までに、カット前のシャフトの重さはこれです。最大17.28グラム−最小17.16グラム=0.12グラム
17.17gram 17.23gram 17.16gram 17.24gram 17.21gram 17.20gram 17.23gram 17.28gram 17.21gram 17.25gram 17.21gram 17.24gram
 そしてこの段階で、ノックも羽根も付けずフルレングス(カット前)のシャフトとポイントだけの状態でF.O.C.は「14%」でした。
 
 ということで、ではどれくらいの重さを追加すればいいかですが、最初に書いたように個人的には何パーセントといった数値にはこだわっていません。スパインやチャート表がそうであるように、その数値だからベストというものではありません。そこでパーセントは結果として量ってはみますが、本当にアバウトなのですがノックが1個=0.37グラムほどなので、適当ですが今回は「2グラムほど」ポイントを重くしてみようと思います。「2グラムほど」重くすれば=「6.1グラムほど」になり=「94グレインほど」になりそうです。
 では、2グラムの重りを探さなければなりません。昔々もっと当たっていた頃に、このように自分のインドアアローを作っていた時にははんだ付けに使うはんだを量りながらカッターで削っていました。今なら魚釣りの玉になった重りがいいと思うのですが、今ネットで見てみると最近はこれらに鉛を使うことが安全面から減ってきているようです。そうこう考えていて、突然思い出して物置で↓見つけました。これはなかなかいけそうです。
 とはいっても、これもネットで調べると今は簡単に入手できないようですが、以前知り合いからもらったものです。空気○の○です。鉛でできていて、4.5ミリ○です。当たり前といえば当たり前なのでしょうが、量ってみると重さのバラツキがほとんどありません。それにポイントのチューブの内径に少し余裕はありますが、ちょうど滑り込む大きさの鉛のオモリです。1個がちょうど0.5グラムでした。(皆さんは釣り道具屋さんに行って探してください。)
 このオモリを4個、チューブの中に叩き込みます。鉛がつぶれる程度に打ち込むので変形してある程度は固定はできますが、念のためエポキシ系接着剤を1個ずつの鉛の先にほんの少し付けて挿入します。叩き込むのに釘の頭を考えていたのですが、ちょうどプラスドライバーの先端の太さがチューブの内径に入りそうなのでこれを使い、深さの印を付けて12本ともに同じくらいの位置まで叩き込みます。
 オモリを入れたポイントは、そろそろ寒くなってきたのでエポキシの接着のためにも、暖かいところに立てた状態で1日置いて硬化すればできあがりです。
 できたヘビーポイントの重さを量ってみると、誤差は最初とあまり変わらずまったく問題のない範囲と判断しました。最大6.22グラム−最小6.18グラム=0.04グラム。どうでしょう。
6.19gram 6.20gram 6.22gram 6.18gram 6.20gram 6.21gram 6.22gram 6.21gram 6.20gram 6.20gram 6.18gram 6.18gram
 満足したところでポイントとシャフトの接着(固定)ですが、ホットメルト(マツヤニ系接着剤)を使うとどうしても加熱を必要とします。加熱はエポキシ系接着剤をはがす時に行うことからも分かるように接着力をなくします。今回、鉛を叩き込んではいますが一応安心のために、加熱を必要としない「ゴム系接着剤」でポイントを固定しました。というか、個人的にはアルミ矢は昔からこの方法でポイントを固定しています。
 
 最後はシャフトをカットして、ノックと羽根です。このサイズのシャフトのブッシングはGノックがそのまま取り付けられるので、ノックを差し込み3インチのカット済み鳥羽根を貼れば完成です。こちらを参考にしてください。
 ところが羽根貼りで最初の1枚を失敗してしまいました。フレッチャーは2台持っているのですが、違うフレッチャーを使ってしまいました。普段カーボンシャフトにハネを貼っているフレッチャーを使ってしまったところ、羽根の接着面がシャフトの表面から少し浮いてしまいました。これはカーボンシャフトでもアルミシャフトでも最初に注意(調整)しなければならないのですが、あまりピッチをきつく付けすぎたり、今回のようにシャフトの外径(太さ)が違う場合は、フレッチャーの貼り付け角度とシャフトに対する位置を調整しないとハネの端が浮いたり接着面が面同士で合わないことがあります。シャフトの中心い向けて真っ直ぐ貼らないと接着力が弱く、剥がれやすくなってしまいます。
 上がカーボンシャフト用のフレッチャーで貼った羽根です。羽根の先端だけでなくサイド面もシャフトから少し浮いています。ソフトベインでも同じことは起こります。フレッチャーが1台の場合は、クリップの角度と位置を調整しなおして貼るようにしましょう。ただしここでも経験則と授業料が必要です。何枚か貼っては失敗して、自分に合ったいい位置を見つけるしかありません。
 インドア用ヘビーポイントの矢の完成です。通常のレギュラーポイントより約2グラム(約31グレイン)トップヘビーな矢で、F.O.C.は「12%」でした。12の意味は分かりませんが、持った感じは大満足です。総重量を量ってみると、自分の射ち方を考慮しなくても18mで4センチには十分収まる誤差の範囲と理解します。どうでしょう。
20.98gram 21.12gram 21.02gram 21.06gram 21.09gram 21.07gram 21.07gram 21.03gram 21.06gram 21.02gram 21.09gram 21.13gram
 またまたインドアの季節到来です。それにしても、47年やっていて、いまだにインドアでカーボン矢を射つ勇気がありません。すごいですね、皆さん。。。

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